こんにちは、ほいくのおまもりです。
今回は『なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか』という本のご紹介と、この本を読んで私が感じたこと、驚いたことを書いてみます。日本は世界と比べて教育に対する支出が少ない、と言われますが、はっきりいって想像を遥かに超えていました…!
簡単に内容紹介
最初に書いてしまうとこの本、3500円(+税)もする上に、かなり分厚いです。
そういう意味で、ちょっと現場の保育士さん向けというよりは、大学で学んでいる人や、園長、主任クラスの人が腰を据えて読むような本。
ただ、内容自体は保育をしていれば馴染みのあることばかりですし、使われている言葉も平坦なので、読みやすいとは思います。
さてさて、もう少し内容について書いてみます。
タイトルの通り、本書は世界の幼児教育・保育の現場から、日本の幼児教育・保育に足りないものを探りとろう。というモノ。
出てくる国は次の10カ国。
- ノルウェー
- スウェーデン
- デンマーク
- ドイツ
- フランス
- カナダ
- ニュージーランド
- オーストラリア
- 大韓民国
- 台湾
それぞれの国の保育環境の歴史を踏まえた上で、保育の中身について述べ、そして『日本の保育への示唆』を紹介する。
という構成のため、非常に読み進めやすいです。
また各国を紹介した上で、『終章:世界の保育から日本は何を学ぶべきか』をまとめています。
読書の秋、ちょっと挑戦してみてもいいかもしれませんね。
根底の問題提起|保育の質はどこに?
冒頭、最初のページに、本書が企画されたきっかけと、問題提起がされています。
ちょっと長いですが、引用します。
本書は、近年の世界の保育改革の動向を知ることで、日本の保育改革の将来展望を得ることをめざして企画された。2000年以降、OECD(経済協力開発機構)やEU(欧州連合)諸国は「保育の質改革」に拍車をかけている。日本も1990年の「1.57ショック(1989年の合計特殊出生率)」をきっかけに、「子育て支援」策に取り組んできたが、「保育の質」に関しては、世界の状況と逆行しているように思われる。OECDから指摘を受けて、世界の動向を取り入れようとしているが、足元の構造的基盤が整備されていないため、違和感を拭えない。日本の保育界がなぜこのような状況に陥っているのか、どこに問題があるのか、本書が、その省察の一助となることを願っている。
また、こんなことも書かれています。
P152.昨今、日本では「待機児童」問題が浮上し、その対策は数字のうえでの処理に終始しているが、保育サービスは量的確保の問題ではなく、何よりも「子どもの幸せ」が優先されるべきである。
共働き夫婦の急増に伴った、日本は過去に例をみない保育園需要(ニーズ)の高まりがあります。
その流れに呼応して、保育園の新設ラッシュは止まりません。
通常のビジネスであれば、需要(子どもを預かって欲しい!)があるから供給(保育園を作って沢山受け入れよう!)しよう!
ということに、何の問題もありません。
むしろ、需要に合わせて供給していくことは、当然の流れです。
でも、保育園も普通のビジネスと同じ、という視点でいいのでしょうか?
確かに、子どもを預かってくれなければ困る!という人がいるわけですから、その需要は満たしてあげなければいけません。
でも、預かられる子どもの立場は?
上で引用したとおり一番に大切にするべきは「子どもの幸せ」のはず。
その子どもの幸せをないがしろにして、とにかく、預かれる数を増やそうということに終止してはいないか?
しかも、今は保育士も給料が安くて、辛い…。と言われてしまっています。
一番関わりが多くなる保育士。
その保育士がしんどい、しんどいという状況で一番大切にするべき「子どもの幸せ」は守られるのか?
疑問文で書きましたけど…守られるわけないですよね。
日本は超過酷な環境|2つのグラフ
「そりゃ、これじゃ保育士はしんどいわ…」と感じる、2つのグラフをご紹介します。
いずれも、『なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか』からの引用です。
ちょっと歪んでいて、すみません。
1つ目は、GDP(国内総生産、国がどれだけお金を稼いでいるか)に対して、国が就学前教育に対してどれだけお金を出しているか?
2つ目は、保育士一人に対して何人の子どもを見ているか?
ちょっと驚きませんか?
1つ目はぶっちぎりで、国はお金を出していませんというグラフ。
2つ目はぶっちぎりで、一人で沢山の子どもを見ていますというグラフ。
1つ目のグラフでは、デンマークと比べて10分の1以上の差があります。
2つ目のグラフでは、フィンランドと比べて4倍以上の差があります。
これみたら、保育士が給料少なくて、仕事大変で、しんどくなるの、当たり前すぎる話だと思いませんか?
支出を増やしたら全て解決!というわけでもないですし、日本は高齢者が増えていることで社会保障が増えている。
その流れで教育に支出できないという事情もあるかもしれません。
他がやっているのに日本がやっていないのは絶対におかしい!とは言い切れません。
が!それでもやっぱり、この状況を見過ごすことは出来ない。そういう思いを強くしています。
まとめ
- 『なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか』は、わかりやすい良書
- 日本は世界(OECD加盟国)で一番、GDP比の公財政消費支出が少ない
- 日本は世界(OECD加盟国)で一番、保育士一人に対する子どもの数が多い
ちょっと厳しいことばかり書いたので、「日本の保育現場は世界で一番劣悪だ!」と思ってしまったかもしれません。
ただ、決してそんなことはなく、例えばフランスでは保育学校の教員養成が小学校と同一で、日本の幼児期専門の教員養成のシステムは、フランス人が羨むほどなんだとか。
とはいえ、日本はまだまだ至らないところがあり、そして「子どもの幸せを第一に」考える、という当たり前のことがおざなりになっているのでは?
と感じてしまうのが、今の国や地方自治体の子育て支援です。
その流れの中で、保育士も大変な状況に直面することがあるかと思います。
ぜひ、世界の保育にも目を向けながら、自分なりの保育を探し求めていきましょう!