こんにちは!ほいくのおまもりです。
じっとしてられない、飛び出して出ていってしまう。ADHDが近年話題になっています。対応に四苦八苦する保育士もいます。
でも、ADHDの子どもも、ちゃんと理解して成長していきます。今回は、そんなADHDの援助方法についてまとめてみました!
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴と事例
不注意、多動性、衝動性の3つに分けて説明します。
多くのADHDの子どもは、複合的にこれらをもっていることが多いです。
不注意
集中力のコントロールが難しいということです。
自分の興味あることには周りが見えない、雑音が聞こえないほど集中するのですが、それ以外は集中が2分も続かないことも多く、それによって様々な困ったことになってしまいます。
特徴としては、
- 遊んでいても、ころころと興味が変わる
- 遊びこむと集中しすぎて時間が経つのも忘れてしまう
- 忘れ物をしやすい
- 整理整頓、元あるところにきっちり戻すような片付けが苦手
このような感じでしょうか。
多動性
これは、じっとしていられないということです。
静かに座っているべきところでも、じっとできなくて、座って待つ間にも身体が動いてしまう。
大きな声を出してしまう。
これは脳の状態が影響していて、一説によると、私たちでいうライブ会場でテンションが上がりまくっているような脳の状態が、普段からずっと続いているような感じらしいです。
もちろん、人によって程度は様々ですが、ずっとある種の興奮状態にある、そうなりやすい傾向にあるということです。
衝動性
見て興味があるとやっていいことがどうか深く考えずに、本能的に飛びつくように行動してしまうことをいいます。
例えば、保育園には壁面やお部屋にもたくさんおもちゃが見えたりいろいろ楽しそうなものがあります。
これがADHDの子どもには刺激となってしまい、話を聞いているときでも、見えるとすぐに飛びついてしまうという訳です。
道路のような、危険な場所でも、ふらっと行ってしまうことも多々あります。
他には、欲しいおもちゃがあれば、人がたとえ使っているとしても奪い取ってしまう。
それでたとえ友達が泣いていたとしても全然心が痛まない。
これも衝動性のよくあるケースとして見られます。
個別支援、援助について
思いっきり動く発散する時間をつくる
ADHDはじっと集中して何かに取り組むことが基本的に苦手です。
手足の感覚が発達してきて、「動きたい」欲求の強い幼児ならなおさらです。
極論、中途半端よりも、もう動けないほど疲れさすくらいでちょうど良いかもしれません。
それほど動くと、疲れたけども「満足した」結果は得られるでしょう。
そうなると、ADHDの子どもでも普段よりかは格段に座っていられます。
必ず、発散できる時間を多めにつくるようにしましょう。
落ち着くグッズを用意する
しかし、入園式など、さほど興味もないけどもじっとしていなければいけない時はあります。
小学校を見据えても、すぐ動いてしまうことをコントロールできれば・・・と思うことでしょう。
そんなときはその子に対して落ち着くグッズを用意してみましょう。
よくあるのが、握って気持ちいい感触が得られるボールを持たせること。
足元が動いてしまう子どもに、マットを敷いてあげて、動いても迷惑にならないようにしてあげること。
このような感じですかね。
あとは、身体をさすってあげると、刺激がほどよくいって落ち着ける子どももいます。
その子の落ち着くポイント、方法を探って与えてあげましょう。
スケジュールの導入~活動の目的を知るために~
子どもでも、全て本能で生きているわけではありません。
ADHDの場合、人の気持ちを感じ取れたりはするので、場に応じて自分の振る舞いを自己調整できるように指導していきましょう。
見本では文字で書いてあるのですが、文字が分からない場合がほぼすべてであると思います。
その時は活動の様子の写真や絵を使うと良いでしょう。
スケジュールは自閉症の時と同じように、剥がして終わりにするということは同じです。
ですが、ねらいはちょっと違って、ADHDの場合は「今どうすべきかを知る」ということです。
もちろん、スケジュールの内容がその子に応じて易しいものであることが必須です。
集中できる時間が5分なら、5分は頑張ってみんなと一緒にやってみよう。
終わったら自分で片付けて遊びに行ってもいいよ。というような内容で良いと思います。
その子のもっている集中時間、じっとできる時間を使って、少しずつその子自身がコントロールできるようにきっかけをつくってあげると、成長とともに段々とその時間が伸びていく傾向にあります。
何もないよりも、子どもも指標ができて「ここまでがんばるぞ」というメリハリにもなりますし、できたことを誉められると、健全な成長にもつながります。
同時に、あとどれくらい?というものがあれば良いでしょう。
今日はやることが3つあるので、3つやればおしまいとか、終わりが子どもにとって見えるようにすると、子どももそれに向かって集中しやすくなります。
集団保育について
友達を叩いてしまう、欲しいものを奪ってしまうことの対応
事前に約束しても、欲しいものがあるとすぐ奪ってしまったり、話しかけられると突き飛ばしてしまったり、なかなか治らなくて困ったことはないでしょうか。
やってしまったらその度に謝り、反省していくのはとても大事です。
見えないところで本人の経験値として成長していっているのです。
しかし、そのままでは良くないので、「欲しい時は、貸してと言うようにしよう」というように、正しい方法を絵に表して、外へ行く前に見せて約束するなど、根気よく伝えていきましょう。
これで、できたらすかさず誉めて、達成感あるものにします。
これが基本になります。
しかし、一筋縄ではいかないことも多々あります。
ADHDの子どもの中には感覚が鈍い子どももいます。
そんな子どもは、叩かれても痛いとか、押されても刺激として感じにくいので、他の子にもそうしてしまう傾向があるのです。
しかし、仕方ないで済ませられるようなものではありません。
よく子どもを見て、静止できるようにしておきましょう。
正しい力の程度を知るためには、これは知識や経験として積んでいくしかないので、その場合は長い目で見て、対応していくようにしましょう。
また、周りの子どもにも、理解を求めることが必要です。
わざとやっているわけではないことを知らせていきましょう。
保育室には刺激になるものを避けよう
これは、主に視覚的なものです。
壁にたくさんの壁面装飾や、おもちゃが見えるところにあったりすると、目に入って刺激になり、集中できなくなって立ち歩いたり、走っていってしまったりします。
できるだけ保育室はシンプルにしましょう。
制作などする場合は、ついたてを作って、視界に集中できるようにしましょう。
例えば、真っ白の紙に点が1つついているのと、色々描かれた中で1つの点に集中するのでは、集中のしやすさが違います。
これらは周りの余計な物を見えなくし、集中しやすくする援助と思ってください。
主役になれる時間をつくろう
ADHDの子どもは、好きなことはとことんやってみるという傾向があります。
自閉症にもそういった傾向が見られます。
もちろんこれは子どもによるのですが、自閉症と違って、人に認められることが大好きで、人なつっこい場合が多いので、その意欲を活かして主役になれる時間をつくるとよいでしょう。
普段、友達を叩いてしまったり、乱暴者だというイメージがつきやすいADHDの子どもは、なかなか自分の良いところを分かってもらえないということもあります。
ここで子どもが自信をもって、また周りに認められる経験をしておくと、年長になっての友達同士でのつながりや、小学校以降の人との関わりにもつながっていきます。
加配について 担当になったらまず何をしよう?
どんな子か詳しく知ろう
これはどの子どもでも基本中の基本になります。
好きなことや、知的がどの程度あるのか、自閉傾向はあるのか?
などなど、基本的なことは押さえておきましょう。
その他ADHDの場合、その子どもの限界を見極めることがかなり重要になってきます。
座って話をどれくらい聞けるのか、絵を描くことはどれくらいできそうか?
待つことは可能か?手指の不器用さは感じていないか?
などなど、子どもの出来る範囲を見極めて、それに応じてスケジュールなどの枠組みを決めていくので、しっかり観察して理解しておきましょう。
方法から理論を学んでいこう
これはどの障害をもっていたとしても言えることです。
よく、困り感はあるけど、どう対応していいか・・・という問題にぶち当たります。
これにはまずは既存の指導方法を学んで、実践しながら理論を学ぶほうが良いです。
理論は実際の子どもの姿が想像しにくく、概念的な記載になりがちです。
実際の子どもは十人十色で、こうすればよいと言うように一概に言えないからです。
そんなある意味あやふやなものに頼るよりも、子どもに実際はたらきかけた実践や方法から、得た方が理解はしやすいです。
今、目の前にいる子どもから情報を得て、方法を探っていきましょう。
そして、後々に理論をつなげていくとすっきりするでしょう。
とにかくどうしたら理解できるかな?すっきり納得いくかな?ということから、やってみることが大切です。
ただの声掛けは付き人にしかならない 自立を目指そう
ADHDの場合、どうしても子どもを静止することが多くなると思います。
飛び出していったり、順番を守れなかったり、押してしまったり。
そんな時は、ちゃんと止めないといけませんよね。
もちろんそれも大事な保育士の仕事です。
それプラス、ADHDの場合もこれからのことを見据えて、成長していく必要があります。
ついつい担当になると、静止が多くなるクセから、なんでも手を出しがちで、見守るということが疎かになっていったりもしがちですが、見守れるところは見守りましょう。
子どもが理解して動きやすい枠組みを与え、そこで自立して行動できたら誉めるようにし、つまずいている様子だと教えてあげる。
この程度の干渉で済めば、子どもも気が楽ですし、保育士も余裕をもって接することができます。
ただ、遊ぶ時は、しっかり好きなことに寄り添って一緒に遊んでください。
子どもの好きな遊びを通して信頼関係を強くしていき、楽しく過ごすことは何よりも大切なことです。
保護者対応について
保護者は、自分の子どもが乱暴で、暴れたりすることで困っていること、怪我をさせていないかな?と心配になっていることが多いです。
そんな保護者へ、「これだけ楽しくしていましたよ」と、園の楽しい様子を伝え、叩いてしまったときでも、「今回はちゃんと悪いことを分かって謝ることができましたよ」と、子どもの成長を細かく伝えていくと良いでしょう。
また良くあることとして、「他の子と一緒に」を求める保護者が多いです。
みんなと一緒にできていないから、みんなと同じ遊びが楽しめていないからと落胆したりする親も多く、そこがギャップになって苦しんでいることも多いです。
なので、保育園の様子は包み隠さず伝えた上で、「保育園ではこうなのですが、困っていることありませんか?」と対話して広げていくようにしましょう。
ありのままの子どもを受けとめ、どうしていこうかな?と言うことを一緒に相談するような姿勢でいくと、保護者の視点も子どもの状況まで下がり、安心して話してくれます。
まとめ
ADHDは、狩猟民族の影響を受けているとも言われるような、興味あることに一直線に進める特性があります。
自分の好きなことに関して、やる気を出した時は、子どもながら急にたくましく見えることもあります。
そんな子どもの特性としっかり向き合って、子どもだけでなく、保育士も成長していける関係になれると良いですね。
また、ここまで読んでいただけたことで伝わると思いますが、ADHDの子どもとの関わりには周り(園長先生や、主任、その他の先生)の協力が不可欠です。
そういった先生の協力が得られる園であるか?ということも、かなり大事なポイントになりますよ。