こんにちは、ほいくのおまもりです。
2019年7月某日、関東・関西エリアで『あい・あい保育園』を展開・運営している株式会社global bridge(グローバルブリッヂ)へインタビューをしました。
- 「グローバルブリッヂはどんな教育体制なのかな?」
- 「うちの保育園では教育制度・研修なんてなかったけど、他はどうなのかな?」
- 「日常の保育をしながら研修って、大変じゃないのかな?」
あなたが抱える疑問が、スッキリわかる話をたくさん聞いてきましたよ。
人材育成をしっかりやる!という姿勢が明確で、それを丁寧に制度化している、素晴らしい会社でした。
どうぞ、御覧ください。
※本文中のカッコ書きは管理人の補足です。
※情報はすべて2019年7月時点のものです。
インタビューの経緯
ほいくのおまもり:今日はお時間をいただき、ありがとうございます。
今回は保育園ではなく本社の方にお話を伺えるということで、保育内容よりも、「グローバルブリッヂはどんな教育体制・制度を整え、取り組んでいるのか?」というお話をお聞きできたらと思っています。
というのも、当サイトのへのお悩み相談で「先輩たちが忙しそうで、具体的に何も教えてもらえない。見よう見まねでやるしかないんです・・・」という声が届いています。
先輩から技を盗む、というのも一つの方法かもしれませんが、そのやり方で戸惑っている方もいるわけです。
そんな中でグローバルブリッヂの会社案内資料などを拝見して、一対一の新人教育の取り組みなど、教育体制・制度がかなりしっかりされているという印象を持ちました。
そのため、教育体制・制度のお話をお聞かせいただくことが、読者にとっても参考になるのではないかと思っています。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします!
グローバルブリッヂ:こちらこそ、よろしくお願いいたします。
インタビュースタート!新入社員への教育体制
ほいくのおまもり:早速ですが新卒社員の場合、どんな研修・体制があるのかをお話いただけますか?
グローバルブリッヂ:わかりました。
新卒社員への教育体制の内容は、
- 入社前の宿泊研修
- 集合研修
- 共育制度
という3つを用意しています。
入社前の宿泊研修
グローバルブリッヂ:一つ目からお話ししていきますね。
入社前の宿泊研修は、年に一回、二泊三日で行う研修になっています。
ほいくのおまもり: 二泊三日!すぐに仲良くなれそうですね。笑 同期との結束も強まりそうです。
グローバルブリッヂ: そうなんです。
具体的にどんなことをするのかというと、
- 学生から社会人と大きくシフトしていく中での意識づけ
- 社員同士の人間関係構築
- 帰属意識、集団意識を持つ
- 初歩的なマナーやコミュニケーション
などです。
園に配属されてしまうと、なかなか他園の保育士と話す機会が少なくなりますよね。
そのため、園に配属される前に全員が集合して、社員同士の人間関係を作る機会にしています。
また、保育の現場は、新卒の保育士でも、最初から保護者の方と関わることが多いですよね。
そのあたりのマナーやコミュニケーションについても現場に出る前に学べる制度にしています。
ほいくのおまもり: コミュニケーションの悩みは当サイトへの相談でもいただきますし、初歩的なマナーは「見て覚えて!」という園が多いと思います。
事前に身につける機会があることはありがたいですね。
集合研修
グローバルブリッヂ: 次に集合研修についてお話しします。
こちらは、年3回行う研修でして、大きな目的としては、自己認知を正しく持っていただくというものです。
ほいくのおまもり: 自己認知・・・ですか?
グローバルブリッヂ: 自分は「何ができている?」「何ができていない?」ということを、1年目同士で意見交換したり、現状報告をしていきます。
その中で、自分にはこの部分の意識が足りないんだな、などと同年代とグループワーク、ケースディスカッションを重ねることで、今の自分は「何ができている?」「何ができていない?」「どうしたらできる?」を正しく認知することができます。
保育園の中だと、同期がいなかったり少なかったりという状況がありますよね。
そうなると、比べる相手が先輩だけで「自分は全然出来ていない・・・」と落ち込むという現象が起きやすくなっているので、同年代と話し合う機会を設けています。
ほいくのおまもり: 確かに同期が少ないと、「先輩と比べて落ち込む」というのはよくありますね。
1年目同士で認知し合う場があると、心の支えにもなりそうです。
年3回なのは意味があるのですか?
グローバルブリッヂ: はい、四半期ごとに「こんなスキルを身につけてほしい」など、新卒に対して求める人材像を提示しています。例えば、
- 他者のことばを正しく理解して実行・伝達できるようになりましょう
- 子どもや保護者の気持ちに共感して受容的な対応ができるようになりましょう
- 専門的スキル、ヒューマンスキルとして基本的な挨拶、身だしなみ、ことばを実践できるようになりましょう
などです。
ほいくのおまもり: 結構細かく設定しているのですね。
グローバルブリッヂ: そうなんです。順を追ってどんなことを身につけてほしいかをあらかじめ提示しておくことで、見通しがつきやすくなりますよね。
自分がどこまでできているのか、何を目指すのかが、明確になります。
そして、集合研修は各期ごとの反省も行うので、四半期ごとに自分を振り返って反省を提示していく、というスケジュールです。
共育制度
グローバルブリッヂ: 3つ目は共育制度についてです。
これは、『教』ではなく、『共』の字で共育制度と呼んでいます。
形としては1on1といって、新卒1人に対して共育係(先輩社員)が1人、付くようにしています。
ほいくのおまもり:新卒と先輩が、共に育っていくから『共育』なのですね。
グローバルブリッヂ: そうなんですね。この目的は2つあり、
- 人材の相互育成
- 離職の防止
です。
人材の相互育成
グローバルブリッヂ: まず、人材の相互育成ですが、1on1を通して新卒だけが育つのではなく、教育をする側も育っていくという考え方です。
具体的な取り組みとして、月に2回30分の時間を取って、共育係と必ず一対一で話す時間を作っています。
新卒社員側からは、業務内容についてやプライベートを相談する場。
共育係からは、
- 精神的支援(頑張ってるよ!などの励まし)
- マインド(保育ってこうあるべきだよねなどの話)
- ノウハウの伝承(こんな場面ではこんな声掛けをするといい等)
をする場としています。
また、新卒と共育係は、必ずしも同じクラスとは限らず、異業種もあります。
(例 新卒:調理師、共育係:保育士 / 新卒:3歳児クラス、共育係:2歳児クラス など)
人を育てるというプロセスは、育てる側の訓練にもなるので、相互育成という位置づけなんですね。
ほいくのおまもり:調理師と保育士の組み合わせ、おもしろいです。
同じクラスの先生より、少し距離がある先生や職種のほうが話しやすいことはありそうですね。
いつも一緒だと、普段の仕事を知っている分、ダメ出しされちゃったりとか。笑
グローバルブリッヂ:1on1は昨年始めたばかりなので、まさにそういった反省がありました。
普段から上下関係が出来ている間柄だと、あまり良くない方向にいってしまうこともあったり。
そのため、今年からは共育係では第三者を設定する形を取り入れています。微調整しながら進めている段階ですね。
新卒の方と共育係の方で年齢差が出てくるとジェネレーションギャップが生じてしまうので、近い年齢で行うことも大切にしています。
ほいくのおまもり: 確かに、年齢差がないほうが色々相談もしやすそうです。
離職の防止
ほいくのおまもり:離職の防止についてはいかがですか?
グローバルブリッヂ: これは精神的支援が中心ですね。
一般的に、完全に悩みが解決出来なくても、発信する場があれば精神的な負担が減るといわれています。
話すことで自己認知をしたり、スキルアップをしたり、解決したりすることが離職防止に繋がっていけばと思っています。
また、新卒や若い社員ですと、「この悩みは園長や主任に相談していいのかな?」というところから、考えてしまうことがあります。
それを最初にキャッチするのが共育係で、その悩み・相談事を、園長や主任に繋げて解決に結び付けていくという役割を担っています。
ほいくのおまもり:実際に、現場の保育士が悩んでいることって、自分ではどうにもならないこともありますよね。
当サイトのお悩み相談の中でも、「園長に相談してみたら?」と伝えることも多いですし「園長に相談したら解決してくれました!」とお返事をいただくことも多いです。
グローバルブリッヂ:また、保育士たち一人ひとりに目標設定をするようにしています。
ほいくのおまもり:目標設定というと、「ちょっとめんどくさい」と思う保育士もいそうです。笑
グローバルブリッヂ:でも、とても大切なことなんですよ。
保育士の仕事は『効力感』といって『自分が何かに対して有益な作用を及ぼすかどうか』を感じづらいという特徴があります。
どういうことかというと、例えば営業などは「頑張ったら売上が増えた!」というように、数字で結果が目に見えますよね。
でも子どもの成長は、保育士が働きかけても、その場で即座に結果が出るとは限らないじゃないですか?
ましてや新卒だと、自分の働きかけの結果なのか?たまたまなのか?といった判断ができず、日々の仕事がモチベーションに繋がりにくいです。
でも、自分自身で目標をしっかり設定し、それを達成出来たという経験する。
先輩や上司から、自身では気がつけていなかった「成長した部分」「頑張った部分」についてコメントをもらう。
やりがいに繋げていけるようなアドバイスを受ける、そして次の目標設定をする。
そうやって成長を感じる場を作ることも、離職率の低下や、仕事を続けたいという意志に繋がると考えています。
ほいくのおまもり:目標設定には、そういった効果があるのですね・・・目からうろこでした。
入社1年目の教科書
ほいくのおまもり: 『入社1年目の教科書』という本(写真左)があるのですが、これはどのように使用されているのですか?
グローバルブリッヂ: こちらは、新卒社員に配っている本です。
新卒の方々に求める姿を具体的に記載していて、集合研修では伝えきれない部分を伝える、サポートのツールとして使用しています。
内容に関しては、漫画も取り入れて読みやすい構成にしています。
また、社長の貞松は2007年から自ら園を運営していて、給与明細と一緒に社員に向けたメッセージを毎月を書いており、そちらは社史とともに別冊(写真右)として掲載しています。
ほいくのおまもり: 様々な形で会社の考えを丁寧に伝えようとしているわけですね。
中途社員の教育制度
ほいくのおまもり: これまでは新卒社員対象のお話しをお聞きしてきました。
中途社員への取り組みもお聞かせいただけますか?
グローバルブリッヂ: 中途採用社員に対しては、スタートアップ研修を取り入れています。
この研修は採用された中途社員の全員が対象で、入社後に3日間連続(9-18時)で行います。
保育だけでなく、介護、オフィス勤務の方も一緒に行い、その中で意見交換もしながら学ぶ場となっています。
内容は、
- 保育、介護業界の動向について
- 会社の事業内容について
- 情報の漏洩
- パワハラ・セクハラなど今の時代の価値観
- コミュニケーション・マナーについて
などとなっています。
中途採用の方々は今までのご経験を踏まえて色々な考え方をお持ちだと思うのですが、当社の考えをしっかりと伝えることで、双方ズレがないようにする、そういった目的で3日間行っています。
ほいくのおまもり:3日間しっかりと研修を行うことで、会社に対しての理解を深めるわけですね。
グローバルブリッヂ: そうですね。そして、スタートアップ研修を受けた半年後にフォローアップ研修(1日)を行います。
これは、スタートアップ研修の内容を実際の現場で活かしてみてどうだったかという半年間の振り返りをします。
自分の行動を振り返ることで、コミュニケーションの強化に繋げていくのです。
当社は「人材の価値を高めないと、会社の価値が高まらない」と考えています。
キレイな施設で、高価な玩具をがあっても、「良い人が勤めていないと意味がない」ということですね。
そのため、人材の価値を高めるためにしっかりと時間を割いています。
ほいくのおまもり:ホームページに公開されている動画(↓以下参照↓)を拝見させていただいたのですが、設備などが必要以上に華美ではないことが印象的でした、素朴といいますか。
「人材の価値を高めないと、会社の価値が高まらない」という部分をお聞きして、それが施設にも表れている印象です。
グローバルブリッヂ: 壁面を作っていないので、それもあるのかもしれないですね。笑
現場の先生たちには、作らなくていいと伝えています。
壁面を否定するわけではなく、そこに数時間かけるのであれば、他のところに時間を使ってほしいという想いがありますね。
また、保育士自身が部屋を構成できるようになってほしいという願いもあります。
こちらが園の設計段階で室内を作り込みすぎるのではなく、その時の状況や子どもたちの発達に応じて、保育士や子どもたち自身で空間を作っていけたら良いなと思っています。
ほいくのおまもり: クラスによって個性も好きなあそびも異なりますものね。
2年目以降の教育体制
ほいくのおまもり:2年目以降ですと、どんな教育体制がありますか?
グローバルブリッヂ: 2年目以降は、担当・年齢別の研修になります。
例えば、0歳児の担任が集まって研修や特定の園の動画をとってディスカッションをするなどです。
また、新卒も中途も、入社1・2年目対象にe-Learning(イーラーニング、インターネットを利用した学習形態)を取り入れています。
これは、会社としての保育に対する基本的な考え方を学んでほしいという目的です。
考え方がずれていると、日々の保育への影響もありますから、考え方をそろえるための制度になります。
e-Learningは、テストを含めて30分、1ヶ月に一本で、新卒社員・中途社員を対象に会社としての方針を共有しています。
ほいくのおまもり: 2年目以降であっても、しっかりと体制を作られているんですね。
研修にあてる時間の作り方
ほいくのおまもり: 教育制度・体制について色々お話しをお聞きしました。
本当に丁寧に人材教育に力を入れられていると思うのですが、「結構なボリュームがありそうだ」という印象も持ちました。
そういった教育にかける時間をどのように作っているのですか?
グローバルブリッヂ: これについては2つ工夫をしているところがあります。
まず1つ目は、非常に基本的なことですが人員的な余裕がないといけないので、基準を上回る人員配置をしています。
2つ目は、Child Care System+Pro(チャイルドケアシステムプロ・CCS+Pro)という保育の業務支援システムを活用して二度手間を失くすなど、事務作業の効率化に取り組んでいます。
その上で大切なことは、例えば「今週あたりに1on1をやろう」などアバウトに決めてしまうと、結局その時間がなかなか作れないということになりがちです。
そのため、『シフト上にその時間を組み込む』という形を取り、確実に時間を確保しています。
施設ぐるみで教育に対して時間を使うようにしているので、日常の保育業務も大切ですが、こういう時間も大事なんだよと伝えています。
ほいくのおまもり:シフトとして確保していくことで、確実に実施していくわけですね。
CCS+Proとは、具体的にどのようなものですか?
グローバルブリッヂ: グループ会社の株式会社social solutionsが開発する保育業務支援システムです。
わかりやすいところですと、
- 登降園管理 ... 朝夕の打刻は保護者がiPadにタッチ。月末には保育料の請求書を自動作成
- メール送信 ... 送信対象を柔軟に選べる一斉メール送信(既読機能、アンケート機能付き)
- シフト作成 ... 園児数に基づいた保育士の必要配置数を自動計算してシフトを作成(特許取得済)
などができます。
グループ会社が開発しているシステムですので、当社が直営する認可保育園53施設の運営で培ったノウハウなどを反映しやすく、使い勝手も日々進歩していますね。
ほいくのおまもり:システムをうまく活用して、業務効率化を図っているわけですね。
そういった積み重ねで時間を捻出しているからこそ、教育体制を整えられるのだと思います。
本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
グローバルブリッヂ: こちらこそ、ありがとうございました。
まとめ|インタビューを終えて
実は、記事中に出てきた株式会社social solutionsで取り扱っている保育ロボット『VEVO』を中心にしたお話を伺う、というのが最初の予定でした。
だったのですが、「保育園への負担になる取材はできるだけ避けたいんですが、どうしましょうか…」と相談され、「本社が直営の保育園のこと、そこまで考えるなんて素晴らしいな!それであれば、本社がどんな取り組みをしているのか聞いてみたい!」と思い、今回のインタビューが実現しました。
この記事の内容だけでも教育体制がかなり充実していることが伝わったと思いますが、インタビュー終了直後「それではそろそろこの辺で…」と伝えると「まだまだ伝えたいこと、いっぱいあるんですけどね。笑」とお話されていました。
実際、まだまだ様々な制度を用意しているのだろうと思います。
冒頭にも書いたとおり
「研修制度はありません」
「見よう見まねで覚えて下さい」
という保育園は確実に存在します。
そんな中、新卒であっても中途であっても2年目以降であっても、教育体制をしっかりと整え、時間や人員も確保しているグローバルブリッヂ社の取り組みは、多くの保育士にとって興味深いものではないでしょうか。
もし興味を持たれた方は、公式HPをチェックしてみてくださいね。