こんにちは、うしさんくまさん(保育士&社会人歴のべ24年)です。
2018年12月、立憲民主党会派所属の衆議院議員である今井雅人さんにインタビューさせてもらいました。
注目度の高い『幼児教育・保育無償化の話』を中心に、保育士の待遇改善や、ご自身も幼稚園に通うお子様がいらしゃるのでどんな幼稚園・保育園に子どもを預けたいかなど、とても熱の入ったお話が伺えました。
野党からみた、今の政策に対する鋭い意見もお話いただいています。どうぞ、御覧ください。
※本文中のカッコ書きは管理人、うしさんの補足です。
幼児教育・保育無償化は順番が違う
うしさん:本日はよろしくお願いします。
今井さん:こちらこそ、よろしくお願いします。
うしさん:まずは、来年(2019年)の10月から、幼児教育保育無償化というところにすごく今関心が集まっています。
保護者としてはうれしい反面、現場で働く保育士からは、保育士の待遇改善が先では?という声もありますがいかがでしょうか?
今井さん:まず最初に考えていただきたいのは、世の中には全部こうなったらいいなという『理想像』があります。
保育園に関する問題でいえば、
- 待機児童がなく、
- 子どもを持つ全ての保護者が保育や幼稚園に必ず預けられて、
- 費用が全て無償である。
これが最も理想な形です。
うしさん:そのとおりです。
今井さん:それが全部実現するならいいけれど、現実には様々な問題があるので、全部同時に成り立たせることは難しい。
そうすると『どういう順番でやっていくのか?』が、大事なポイントになります。
そして幼児教育・保育無償化で解決できる問題は、『経済的な理由で子どもを産むのを諦めた人たちが、経済的援助を受けられるのであれば子どもを持とうと思える』、これが一番だと思います。
ということは、幼児教育・保育無償化で解決できる部分というのは、『一部の人に対してだけ』で全員ではないということになります。
一方、今の日本で子供を持つ親御さんが差し当たって一番困っていることは、『待機児童の問題が解消していない』ということです。
この問題を解決しないで幼児教育・保育無償化をしても、あまり効果はないでしょうし、順番が逆だと思っています。
まずは今、実際に子どもさんがいらっしゃる人で、預ける先がないという人たちをどうやってサポートしてあげるのか?ここに全力を費やすというのが第一です。
そのためには、保育園を増やしていかなければいけないですが、今問題になっているのは場所より、むしろ働く人をどうやって集めるかです。
今、保育士さんというのは、資格を持っている人でもやらないという状況になってしまっていて、その一番の原因は給料が安い、それに尽きると思います。
だから、待機児童の問題を解決するためには、保育士の確保。保育士を確保するためには、保育士の給料を上げる。
とても単純な話で、幼児教育・保育無償化より先に、これを最初にやらなきゃいけないんです。
それと同時に、実際に経済的な理由で子どもを持つことを諦めている人もいるので、一律で幼児教育・保育無償化するのではなく、その人たちを優先的に支援していくというのが順番だと思います。
今回の幼児教育・保育無償化の場合、どんなお金持ちでも保育料が無料になります。
それより、そのお金を保育士の給料を改善などに回したほうがよっぽど効果的になるわけですよね。
なんとなく「子どもの頃からの教育費や保育料を全部無料にします!」というと、国に対してとても親切なイメージを持つかもしれません。
でも、丁寧に目先の問題を見ていると、他にやらなければいけないことってあるのではないかと思います。
うしさん:優先順位の問題、ということですよね。全ての子どもが無償で教育・保育を受けられる、それだけ聞けば素晴らしいことですが、それより先に解決する問題がある、となれば、話が変わってきますよね。
保育園の質は下がるか
うしさん:幼稚園・保育園の質の問題についてはどうでしょう?
今井さん:保育士の人数の緩和によって、死亡事故が増えてしまったりしたら…それはあってはならないことです。
実際、幼い子というのは何をしでかすかわからないのですから。
そこの基準を緩めるというのはかなり慎重に考えないといけません。
例えばAI技術が進んで、子どもの様子を監視して、危険が起きたら何らかの制御をするとか。保育士に事故が起こりそうなことを伝えるとか。
そういったことが技術的に可能になって「人が減っても安全が確保できる」ということになれば、多少基準を緩和することも、考えられるかもしません。
でも、そういった根拠もなしに、今の保育園の状態で基準を緩和したら、それはもう質は落ちますよね。
うしさん:当たり前のことですよね、それって。
今井さん:それと、緩和するということは、つまり「今までのは厳しすぎたのとか?過剰だったのか?」いう話になります。
でも、今、緩和をしようとしているのは、保育園や保育士が足りない、だから緩和しようとしています。
これは間違っていますよ。こんなやり方をしていては、子どもの安全が守られません。
保育園、今後の展望
今井さん:子どもが今後どうなっていくかというところは、はっきりしたことは言えません。
少子化対策はうまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。
ただ、まずは目先の今抱えている課題を解決することが優先です。
将来子どもが減ってしまって、保育園が余ったら、それはその時に廃止などを考えればいいと思います。
大事なことは、『そのときの時代に合わせて対策を取っていくということ』それが行政の仕事でもあります。
困っている人がいるのであれば、それを解消するためのものは積極的に作る、それに尽きるでしょう。
うしさん:将来的には子どもが減っていくのに、保育園をバンバン作ってもいいのかな?という気もするのですが。困っている人がいるのもわかるのですが…。
今井さん:保育園の施設は極端にお金がかかる施設ではないので、そこまで心配する必要はないと思いますよ。
安っぽいという意味ではなくて、複雑な構造をしていない、シンプルなものという意味です。
もちろん、学校の空き教室など、利用できるものがあれば、それは積極的に利用していけばいいとも思いますけどね。
でも、必要としている人がいるのであれば、それは作っていいんです。
なぜ作っていいのかといえば、「困っていても、こうやって保育園ができている、ちゃんと問題が解決されている」そういうことを、しっかりと国・行政が姿勢として見せていくことが大事なんです。
少子高齢化という問題を日本は抱えていますが、目の前の問題を解決してあげることで、その次の世代の人たちは、「それなら私達もやっていけるね」と思うわけです。
でも、目の前の問題が解決していない人、必死に苦しい思いをしても誰にも助けてもらえない人…そんな姿をたくさん見てしまったら、子どもを持つことを諦めたり、老後の心配をして若いうちからお金を貯め込むなど、色々なところで躊躇してします。
だから、実際に育児をしている人たちの問題を解決してあげるということは、将来の夢や安心感につながっていくんです。
そうやって二次効果が出てくるんですよ。
うしさん:解決してくれたという経験が、次につながっていくわけですね。
父親目線で一言
うしさん:今井議員は幼稚園に通われるお子様がいらっしゃるので、父親目線的な考えも聞かせてもらえますか?
今井さん:そうですね…僕個人でいえば、何を一番望むかと言われたらやっぱりいい先生に預けたいですよね。
安心して預けられる保育士さんとか、うちの場合は幼稚園ですけど。
そのためであれば、多少金がかかってもしょうがない、と思いますよね。
うしさん:親であれば、誰もが当然に思っていることですよね。
無償化に子どもが持てる人もいるのかもしれないですが、無償化によって業界全体の質が下がってしまって、いい先生が見つからない、いい先生に預けられないとなってしまったら、すごくネガティブな話ですよね。
今井さん:そうなってくると、逆に格差が出来てしまうことだってありえます。いい先生のところに行くにはものすごいお金がかかるというように。
そうなったら一部のお金持ちしかしっかりとした教育を受けられない、そんなふうになってしまえば格差は広がりますよ。
ですからやはり、今一番の問題になっている待機児童や保育士の処遇の問題は、無償化よりも優先度が高いはずなんです。
うしさん:保育士の給料を上げるためには、完全無償化など充てる予定のお金を使うことだって考えられますよね。
今井さん:その通りです。無償化の財源があるなら、そっちに充てたほうがいいんじゃないと思います。
うしさん:今日は貴重なお話を、ありがとうございました。
今井さん:こちらこそ、ありがとうございました。
まとめ
突然のお願いにも関わらず、快くインタビューを受けてくださった今井議員。
「無償化より、待機児童問題や保育士の処遇改善が先では?!」と思っている保育士は多いですが(僕も同じ考え)、
その考えについて順序立てて、丁寧に答えてくださったのが印象的でした。
また、ご自身もお子さまがいらっしゃるので、「一番望むことは、いい先生にあずけること」という言葉にも、強い説得力を感じました。
「保育士の労働環境は全然改善されないじゃないか!」と嘆く保育士さんも多いですが、
保育士の考えを汲み取り、活動されている議員さんがいることが伝われば嬉しいです。