こんにちは、ほいくのおまもり です。
保育士は学校で発達障害についても勉強してます。
でも、実際に関わることになると戸惑うことばかり…。
しかも子どもの対応だけでも一苦労なのに、保護者対応まで…。どうしたらいいの?!助けて?!
そんなあなたに、実際に多くの子どもたちと関わってきたまあちゃん先生がアドバイスしますよ!
私が壁にぶち当たった話
保育園や児童発達支援施設で、色々な個性を持った子どもたちと出会ってきました。
例えば…
- 教室の中や廊下、園庭を走り回り、落ち着いて話を聞くことが難しい…
- 何かと、イヤイヤ!が激しい…
- 泣いたり、手が出てしまう等、活動やあそびの中で気持ちの切り替えが難しい…
こんな場面に一度は出会っている保育士さん、多いのではないでしょうか。
私もそのような場面で、どうしたら良いのか…と悩んだ経験があります。
その中でも、特に印象に残っている出来事を2つ紹介します。
大好きな活動には集中力抜群!しかし、終わらせることが出来ない…
ブロックあそびや園庭あそびが大好き!なお子さん。
一度あそびを始めると集中して取り組むことが多く、自分なりに色々考えてブロックを組み立てたり、砂遊びをしたりと楽しく遊んでいました。
「〇時になったら片付けだよ~」とクラス全体に向けて伝えていても、その言葉は届いていなかった模様。
片付けの時間になると、大パニック!!
私が「もう片付けの時間だよ!次の活動が始まるよ!」と伝えても、「いやだ!いかない!」の一点張り。
これがこの時だけでなく、毎日、毎時間。また泣いちゃうかな…どうしよう。
次の活動に子どもを連れて行けなかったら先輩に怒られる…。
上手く子どもの気持ちを切り替えられない自分自身にも苛立ったことを覚えています。
お集まりの時に、教室内を走り回る…
保育経験がある皆さんはご存知だと思いますが、1日の流れの中にお集まりの時間が何度かやってきます。
その時に、手遊びをしても、歌を歌っても、絵本や紙芝居を読んでも気持ちが向きにくく、そんなことより走りたい!
という感じで楽しそうに走り回っているお子さんがいました。
「今は何の時間かな?お集まりの時間だよ」と伝えて1度参加しても、数分後にはまたフラフラと立ち歩き始めてしまうのです。
保育士として、今はこの時間だ!と伝えなければいけないという気持ちになった私は一生懸命連れ戻していました。
でも本人は楽しくなさそう…どうしたらこの子は楽しく参加できるのかな…と悩んだ場面がありました。
発達障害の種類
関わる秘訣をお伝えする前に、発達障害の種類について簡単に説明します。
広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)
【主な特徴】
人との関わりの弱さ・人と関係を築くことの苦手さ
言葉の遅れ・コミュニケーションの苦手さ
興味や関心の限定・こだわり・感覚の問題
※知的な遅れを伴う場合もあれば、遅れのない場合もあります。
ADHD(注意欠陥/多動性障害)
【主な特徴】
■不注意
ケアレスミスが多い
集中して活動に取り組めない
物を失くすことが多い
■衝動性
順番待ちが苦手
思いついたらそのまま行動する
■多動性
椅子に座っていられず立ち歩く
落ち着いて遊ぶことができない
動きが多い
LD(学習障害)
【主な特徴】
知的な遅れや行動上の問題
発達上の特徴は特にないが、ある特定の分野が極端にできない
読み書き障害と算数障害がある
知的障害
【主な特徴】
考えるスピードがゆっくり
抽象的な表現など難しいことばが分かりにくい
一度にたくさんのことは覚えられない
一旦まとめ
「発達障害」とは、先天的な脳機能の発達が関係する障害のことをいいます。
服薬や手術で直るものではなく、発達障害の特徴は生涯にわたって続いていきます。
しかし、早い段階から本人の発達特性を理解してかかわることで、本人なりの成長が期待でき、社会に適応するための力を身に着けていくことができるのです!
発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手な面がありますが、優れた能力が発揮されている場合もあり、アンバランスな様子が周りから理解されにくいことがあります。
発達障害の方が個々の能力を伸ばし、社会の中で自立していくためには、子どものうちからの「気づき」と「周囲の理解」そして「適切なサポート」が必要になってきます。
発達障害児と関わるときの4つの秘訣
信頼関係を築く大切さ
どんな子どもたちにも共通することですが、なんといっても大事なのは子どもたちとの信頼関係です。
この信頼関係を築くということが、発達障害の子どもたちとの関わりの中で感じる難しさの1つでもあります。
信頼関係が築けていないと、どんな場面でもイヤイヤを発揮したり、聞き分けの悪い印象の子どもとなってしまいがちです。
関係を築いていくためには、
- 子ども自身の器質的な問題
- 理解力
- 感覚の過敏さ
- 気分の変動
など、どのように影響を及ぼしているかを理解する必要があります。
子どもが楽しいと感じている瞬間、その楽しさを誰かと共有できた瞬間を大切にし、「もっとやりたい、もっと関わりたい」という気持ちを引き出すことが、信頼関係にも繋がります。
発達障害にも様々なお子さんがいますが、みんなそれぞれの個性を持っていて、好きなことも、嫌なことも、私たち大人と一緒でみんな違うのです。
大人の私たちも、無理やり自分が嫌なことをされたら、拒否反応を起こしたくなりますよね。
子どもたちもそれと一緒なのです。
ただ、大人の視点で見ると、「なんで今この行動をしたの?」と理解しがたい場面に遭遇することもあるかもしれません。
そんな時は、子どもが要求したこと、楽しいと感じること、嫌だなと感じる原因を探ることが、子どもたちの理解への第一歩です。
簡単には理解できないこともあると思います。
その場合には、時間を掛け、一緒に働く仲間と相談しながら進めていくことが大切です。
子どもたちが「先生が分かってくれたんだ」と実感できる場面が増えていくこと、これが最も信頼関係を築くうえで大切なことです。
そして、子どもが積み重ねてきた「人への信頼関係」は、これからの生活習慣の獲得や遊びの拡大に大きな影響を及ぼすものに繋がっていくのです。
イヤイヤ!の場面ではとことん付き合ってみる。これはチャンス!
生活の中で、イヤイヤとなる場面はいつでしょうか?
例えば
- 好きな遊びを終わらせるのが難しい
- なかなかお部屋に入らない などなど
私もよくこのような場面に出会ってきた保育士の1人です。
まずは、子どもたちの気持ちに向き合い、とことん付き合ってあげましょう。
- なぜ今気持ちが崩れたのか
- 毎回この時と決まっているのか
- 何が嫌な時にパニックになるのか
行動の背景は様々です。
この行動は何をきっかけにして、どのような場面で起こりやすいのかなどの原因を考え、行動の前後の状況も含めて把握し、丁寧に整理していきましょう。
そして、子どもの気持ちを受け止め、試行錯誤しながらその場その場で臨機応変な対応していくことが、私たち保育者の役目です。
とことん付き合う方法としては、
- クールダウンができる環境(先生と1対1、静かな場所に移動する)を整える
- 今何が嫌だったか、その思いを汲み取り、受け止める
- 好きなことや楽しいこと、気持ちが変わりそうなことを提示したり、伝えていく中で気持ちを切り替える手段を見つける
- 好きなあそびが終われない場合は、終わり方を子ども目線で(又は子どもと一緒に)考えてみる
このように、子どもの様子で対応の仕方は様々ですが、まずは子どもの目線に立って考え、どうやったら気持ちが切り替わるのか探る必要があります。
しかし、場合によっては過度に大人が反応しないことも大切です。
例えば、
- 一定時間付き合っても変化しない
- 大人が近くにいるほうが激しく癇癪をする
そんな時は、少し離れた場所から大人は見守り、子どもを1人で落ち着くまで見守るのも1つの手段です。
子どもたちを、無理矢理引っ張って何か取り組ませようとすると逆効果になる場合があります。
特に自閉症の傾向があるお子さんは、嫌な印象が1度定着すると、それを拭い去るほうが困難です。
ここの見極めが子どもとの信頼関係を築いていく上でも大切なことなのですが、どの方法がこの子にとって一番よいのかを試行錯誤しながら対応していきたいですね。
また、ダメなことはダメと伝えるのは必要です。
本当にいけないことをした時などには、一貫性を持って伝えるようにしましょう。
伝えるときは、簡潔かつ短いことばで(しません、おしまい等)繰り返し知らせていきましょう。
生活の中で見通しが持てる環境を整える(TEACCHプログラム)
フラフラ立ち歩く、予期せぬことが突然起こるとパニックになるなど、子どもが落ち着かなくなることには理由があります。
理由としては、
- 今何が起きているか分からない
- 次は何が起こるのか等、先の見通しが持てない
- 実際に私たちが見えてる視点で物事が見えにくい
このように自閉傾向のある子どもは、状況理解が難しいことがあり、その結果どうしたら良いのか分からず、混乱してしまいます。
このような分かりやすい環境を整えることを「構造化」といいます。
この手法を用いて環境を整理することで、先の見通しが持ちやすくなったり、心理的にも安定するので、慣れてくると大人が声掛けしなくても、子ども自身で理解したり、次の行動に移せる場面が増えてきます。
例えば、
- “朝の支度の場所” “製作をする場所”など活動を場所を結び付けたり、同線を作る
- 集中しやすい環境を整える
これを「物理的構造化」といい、有効な手段の一つです。
また、保育の中で子どもへの声掛けを工夫しても伝わらない、理解してくれない等の場面もあるでしょう。
そのようなときは、声掛けと共にイラストや写真で提示する視覚的提示を使って行うと、より子どもも分かりやすく、繰り返すことで理解することが増えてきます。
例えば
- 1日のスケジュールを写真やイラストで流れを作り、予告する
- 製作物や衣服の畳み方など、やり方の手順表を使用する
- 靴やバックなど置いてほしい場所に、写真やイラスト、マークを貼る
これを「視覚的構造化」といいます。
例えば、外出先でトイレを探すとき、まずはトイレのマークを探しませんか?
なぜ探すのかというと、トイレのマーク=トイレがある場所ということを知っているから、つまりトイレのマークを見つけることは“排泄が出来る場所”という見通しに繋がるからです。
そして、トイレを探していた時に、マークを見つけるとホッとしますよね。
それと同じで、
自閉傾向のある子どもたちも、今は何をする時間なのか、次は何をするのかなど、表示やマーク、写真やイラストを手掛かりにすると分かりやすい傾向があります。
イヤイヤの場面でも視覚的に見通しを持たせることで気持ちの切り替えが早くなることがあるので、是非使用してみてくださいね。
感覚と子どもの発達
子どもたちと一緒に過ごす中で、
- 高いところに登りたがる、走りまわる
- 姿勢が崩れやすい
- 落ち着きがない
- 決まった服しか着ない、帽子を嫌がる
- 散髪や歯磨きを嫌がる
- 力加減がうまくできない
こんな場面に遭遇したことはありませんか?
しかし、これは子どもがわざと行っている行動ではないのです。
“感覚”につまづきがある場合が多いのです。
身体の様々な場所から受け取る感覚情報をうまく処理することが出来ないと、日常の出来事にスムーズに対応できないことがあります。
感覚は、ほとんど無意識のうちに使っているものなので、“ダメだよ!”と伝えるだけではプラスに働きません。
では、どうしたらよいか?
脳の中に流れ込んでくる様々な感覚情報を交通整理する働きのことを「感覚統合」といい、この感覚を整えていくことが必要です。
例えば
- グッと力の入る感覚の遊び(マットに挟まったり、タオルで巻いてあげる等)
- マッサージやふれあいあそびを取り入れる
- 揺れや回転を楽しむあそび(大人の膝の上に乗ってゆらゆら、おいもごろごろ等)
- 沢山走る場面を作る
など、子どもが好きなものから始めることで、日常生活の中でも様々な感覚に触れ合うことが出来ます。
感覚を整えてあげると、その後の集中力が上がったり、落ち着いて過ごすことが出来るようになります。
困ったな…そんな時は、子どもが好きそうな遊びの中に感覚遊びも取り入れてみてください。
保護者対応、3つの秘訣
少しずつ信頼関係が築けてくると、保育者側も、保護者側も色々なことを話す間柄になります。
障害を持ったお子さんと接する悩みだけでなく、そのご家族との関わり方で悩む保育者も多いのではないでしょうか。
例えば、
- 園の様子を伝えたけれど理解してもらえない。
- 保護者との共通理解が難しい
- 家庭方針があるため、園でのやり方がなかなか理解してもらえない
こんな場面に直面することもあります。
そんな時はどうやって解決していくか、ここでは3つの秘訣を教えます。
沢山コミュニケーションを図ろう!
「今日○○ができましたよ!」
「○○がとても可愛かったですよ」
など、どんな些細なことでも、しっかりと伝えてみましょう。
“うちの子はちょっと周りと違うのかも…”
そんな不安を抱えたり、周りと自分の子を比べたりしてしまう保護者が大半かと思います。
しかし、子どもが持っている力を信じて毎日の育児に励んでいます。
家での姿と保育園・幼稚園での姿が異なるのも当たり前のことです。
私たち大人も、職場や外出先では“しっかりしなきゃ”“頑張ろう!”と自然に思いながら過ごしていますが、家に帰ればグターっとしたい時もありますよね。
私も以前、保護者の方に
「家ではこんなことしないのに…先生の前では頑張っているんですね。嬉しいです。」
「園に来ると、比較的落ち着いているし、そしてすごく楽しそうに過ごしているんです。先生のお陰です。」
そんな嬉しいお言葉を頂いたことがあります。
園で子どもが頑張っている姿を伝えるだけで、育児の励みになります。
それを繰り返していくと、“先生はうちの子をしっかりと理解してくれている、見ていてくれている”という信頼に繋がり、お母さん方も家での出来事をはじめ、些細な悩み事も伝えてきてくれるようになりますよ。
子どもが成長すると、保護者の気持ちも少しずつ成長する
子どものちょっとの変化や成長した場面、園で行った工夫点などを明確に保護者に伝えるようにしましょう。
「〇〇はまだ難しいのかなと思ったので、○○をしてみたら出来ましたよ!」など、“この手掛かりがあると出来たよ”という出来るまでのプロセスを明確にするのです。
そうすると、保護者も“こうすることで、この子にも出来ることが増えるんだ!”という気付きに繋がります。
もちろん、家庭では忙しくて出来ない支援などもあるかと思います。
その時は、「園にいるときは保育者の手もあるので、こんなことをやってみたいと思うのですが、どうでしょうか…?」など、その都度何か手掛かりを探る方法を伝えたり、一緒に考えていきましょうという姿勢で取り組みましょう。
また、
“この場面の参加が難しかった”
“○○をしてみたが、上手く気持ちの切り替えが出来なかった”
などと、子どもがうまくできなかったこと、難しかったことも正直に伝え、共有することが大切です。
「園ではこの支援をしてみましたが、上手くいきませんでした。家庭ではどのようにしていますか?」
などと、保護者に聞いてみると、園での手掛かりになることもあります。
お母さん方もお子さんをどうしたら穏やかに育てていけるか、毎日試行錯誤しています。
そのお手伝いをするのが私たち保育者の役割です。
保護者の願いも傾聴しながら、子どもにとっての良い方法を繰り返し一緒に見つけていくことで、子どもたちの姿も変化していきます。
子どもの姿が変化すると、お母さん自身の気持ちや、子どもと向き合おうとする姿勢が変化してきます。
そして、お母さん自身の気持ちが変化すると、家庭での対応が変化したり、家族全体が良い方向へと動き出す、このように支援は繋がっていくのです。
職員同士で連携しながら保護者支援をしよう
保護者に○○といわれた…などと悩むこともあると思います。
そのような時は、一人で抱え込まず、職場の先輩や主任、園長に速やかに相談しましょう。
園の保護者は園全体で把握し、フォローすることも大切です。
“あの先生は○○してくれたのに、この先生は○○してくれなかった”
このような対応の違いも、敏感に反応される保護者が多いです。
その都度お互いが意識しながら把握していくことで、良い支援、信頼される先生に繋がると思います。
特に、対応などはその日によって変わることも、臨機応変な対応が必要な場面も沢山あります。
職員が少しでも同じように対応できるよう、共通理解を図りながら保育に取り組んでいきたいですね。
今、発達障害児の保育で求められているもの
発達障害を持った子どもたちは、日によってこだわりが変化することがあります。
昨日はだめだったのに、今日は大丈夫!なんてことも日常茶飯事です。
その時も、「お、今日はこれなんだ。よし、じゃあどうしていこうかな」くらいの気持ちで身構えてみると、案外子どももコロっと気分が変わり、機嫌が直ったりするものです。
“発達障害だから特別なことしなきゃ!”
“何かしてあげなきゃ、どうしよう”
などと身構えるよりも、素直な気持ちで接してみてください。
そうすると、自然と子どもとの仲が深まったり、頼ってくれるようになります。
また、「どうして○○したの!?」と言いたいときもあると思います。
けれど、子どもたちは悪気があってやったことではないこともあります。
“この行動がないと、落ち着かないんだ!”
そんなときもあります。
もしその行動がその場面にとって適切でないとき、どうやって伝えたらよいか。
無理矢理ではなく、どうやったらその子にとって納得のいくやり方なのか。
それを見つけてあげたり、追求できるのが保育者であり、支援者として求められていることだと感じます。
そして、子どもたちの好きなことや得意な分野があるときは、是非そこを伸ばしてあげてください。
好きなこと、得意なことは生きていく上での最大の武器です。
その武器を早い段階で見つけて理解してあげる、それを最大限に生かす場を提供してあげることができる保育者・支援者でありたいと私自身も思っています。
目の前にいる個性に向き合い、集団の中でどうこうするよりも、まずその子1人ひとりの個性を見つめて、理解してあげることから支援は始まると私は感じています。
皆さんは、“初めて家族以外に関わった先生”という存在です。
人と人が支えあって成長していく、その第一歩の段階で出会える素敵な職業です。
まずは子ども1人ひとりに向き合って、この関われる瞬間を大切にしてください。
補足
今回の記事は、実際に発達障害のお子さんとも多く関わり、
今はフリーランス保育士として活躍中のまあちゃん先生にお願いしました。
ベビーシッターとしての活動などについてもブログで紹介されていますので、ぜひ、サイトを覗いてみてくださいね!