【オススメ本】なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか【読書の秋に是非!】

2017年9月22日

こんにちは、ほいくのおまもりです。

今回は『なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか』という本のご紹介と、この本を読んで私が感じたこと、驚いたことを書いてみます。日本は世界と比べて教育に対する支出が少ない、と言われますが、はっきりいって想像を遥かに超えていました…!

簡単に内容紹介

最初に書いてしまうとこの本、3500円(+税)もする上に、かなり分厚いです。

そういう意味で、ちょっと現場の保育士さん向けというよりは、大学で学んでいる人や、園長、主任クラスの人が腰を据えて読むような本。

ただ、内容自体は保育をしていれば馴染みのあることばかりですし、使われている言葉も平坦なので、読みやすいとは思います。

さてさて、もう少し内容について書いてみます。

タイトルの通り、本書は世界の幼児教育・保育の現場から、日本の幼児教育・保育に足りないものを探りとろう。というモノ。

出てくる国は次の10カ国。

  • ノルウェー
  • スウェーデン
  • デンマーク
  • ドイツ
  • フランス
  • カナダ
  • ニュージーランド
  • オーストラリア
  • 大韓民国
  • 台湾

それぞれの国の保育環境の歴史を踏まえた上で、保育の中身について述べ、そして『日本の保育への示唆』を紹介する。

という構成のため、非常に読み進めやすいです。

また各国を紹介した上で、『終章:世界の保育から日本は何を学ぶべきか』をまとめています。

読書の秋、ちょっと挑戦してみてもいいかもしれませんね。

根底の問題提起|保育の質はどこに?

冒頭、最初のページに、本書が企画されたきっかけと、問題提起がされています。

ちょっと長いですが、引用します。

本書は、近年の世界の保育改革の動向を知ることで、日本の保育改革の将来展望を得ることをめざして企画された。2000年以降、OECD(経済協力開発機構)やEU(欧州連合)諸国は「保育の質改革」に拍車をかけている。日本も1990年の「1.57ショック(1989年の合計特殊出生率)」をきっかけに、「子育て支援」策に取り組んできたが、「保育の質」に関しては、世界の状況と逆行しているように思われる。OECDから指摘を受けて、世界の動向を取り入れようとしているが、足元の構造的基盤が整備されていないため、違和感を拭えない。日本の保育界がなぜこのような状況に陥っているのか、どこに問題があるのか、本書が、その省察の一助となることを願っている。

また、こんなことも書かれています。

P152.昨今、日本では「待機児童」問題が浮上し、その対策は数字のうえでの処理に終始しているが、保育サービスは量的確保の問題ではなく、何よりも「子どもの幸せ」が優先されるべきである。

共働き夫婦の急増に伴った、日本は過去に例をみない保育園需要(ニーズ)の高まりがあります。

その流れに呼応して、保育園の新設ラッシュは止まりません。

通常のビジネスであれば、需要(子どもを預かって欲しい!)があるから供給(保育園を作って沢山受け入れよう!)しよう!

ということに、何の問題もありません。

むしろ、需要に合わせて供給していくことは、当然の流れです。

でも、保育園も普通のビジネスと同じ、という視点でいいのでしょうか?

確かに、子どもを預かってくれなければ困る!という人がいるわけですから、その需要は満たしてあげなければいけません。

でも、預かられる子どもの立場は?

上で引用したとおり一番に大切にするべきは「子どもの幸せ」のはず。

その子どもの幸せをないがしろにして、とにかく、預かれる数を増やそうということに終止してはいないか?

しかも、今は保育士も給料が安くて、辛い…。と言われてしまっています。

一番関わりが多くなる保育士。

その保育士がしんどい、しんどいという状況で一番大切にするべき「子どもの幸せ」は守られるのか?

疑問文で書きましたけど…守られるわけないですよね。

日本は超過酷な環境|2つのグラフ

「そりゃ、これじゃ保育士はしんどいわ…」と感じる、2つのグラフをご紹介します。

いずれも、『なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか』からの引用です。

公財政教育支出の対GDP費(就学前教育段階)

保育者一人に対する子どもの数(最大):3〜5歳児

ちょっと歪んでいて、すみません。

1つ目は、GDP(国内総生産、国がどれだけお金を稼いでいるか)に対して、国が就学前教育に対してどれだけお金を出しているか?

2つ目は、保育士一人に対して何人の子どもを見ているか?

ちょっと驚きませんか?

1つ目はぶっちぎりで、国はお金を出していませんというグラフ。

2つ目はぶっちぎりで、一人で沢山の子どもを見ていますというグラフ。

1つ目のグラフでは、デンマークと比べて10分の1以上の差があります。

2つ目のグラフでは、フィンランドと比べて4倍以上の差があります。

これみたら、保育士が給料少なくて、仕事大変で、しんどくなるの、当たり前すぎる話だと思いませんか?

支出を増やしたら全て解決!というわけでもないですし、日本は高齢者が増えていることで社会保障が増えている。

その流れで教育に支出できないという事情もあるかもしれません。

他がやっているのに日本がやっていないのは絶対におかしい!とは言い切れません。

が!それでもやっぱり、この状況を見過ごすことは出来ない。そういう思いを強くしています。

まとめ

  • 『なぜ世界の幼児教育・保育を学ぶのか』は、わかりやすい良書
  • 日本は世界(OECD加盟国)で一番、GDP比の公財政消費支出が少ない
  • 日本は世界(OECD加盟国)で一番、保育士一人に対する子どもの数が多い

ちょっと厳しいことばかり書いたので、「日本の保育現場は世界で一番劣悪だ!」と思ってしまったかもしれません。

ただ、決してそんなことはなく、例えばフランスでは保育学校の教員養成が小学校と同一で、日本の幼児期専門の教員養成のシステムは、フランス人が羨むほどなんだとか。

とはいえ、日本はまだまだ至らないところがあり、そして「子どもの幸せを第一に」考える、という当たり前のことがおざなりになっているのでは?

と感じてしまうのが、今の国や地方自治体の子育て支援です。

その流れの中で、保育士も大変な状況に直面することがあるかと思います。

ぜひ、世界の保育にも目を向けながら、自分なりの保育を探し求めていきましょう!

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ほいくのおまもり

サイト管理人夫婦の夫の方。保育士を3年勤めた後、営業や経理、自営業など幅広い仕事をして社会人14年目。異色な人生経験を少しでも役立てたいと思いから、2016年4月にこのサイト立ち上げました。3児の父でミニマリストの読書好きです。好きな言葉はLess is more.

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